2021-01-01から1年間の記事一覧
芸術作品を作りそこねることについて二人の美学者が議論している。 二つの記事で第一に問題となっているのは、「failed-art」なるクラスが実際に存在することを認めるかどうかである。 「failed-art」とはクリスティ・マグワイアが提唱した概念で、銭清弘さ…
松永伸司『ビデオゲームの美学』の帯には「ビデオゲームは芸術だ!」というキャッチフレーズが用いられている(松永さんではなく編集者の言葉らしい)。 今回訳出して紹介するのは、これとは対照的に、「芸術はゲームだ」と題されたティ・グエンの記事である…
児玉聡さんの「オックスフォード哲学者奇行」を読むのはじつに楽しい。 これは、オックスフォード大学にゆかりのある哲学者にまつわるエピソードを紹介する連載記事で、分析系の哲学者のあいだでも話題になることがある。 連載で最初に取り上げられる人物は…
『ニューQ』(Issue03 名付けようのない戦い号)に「写真を介した情動」という記事を寄稿しました。 ニューQ: 新しい問いを考える哲学カルチャーマガジン (Issue03 名付けようのない戦い号) セオ商事 Amazon 「写真で何かをつたえるとは何か?」という企画を…
最近、芸術実践における作者の意図の役割がまたもや話題になっている。 そのきっかけはさておき、私は人々の意図理解が気になっている。 とりわけ、自分の意図に関する作者の報告の受け止め方に関して。 みんな作者の意図の役割についてよく議論するのに、そ…
分析美学が批評の執筆に役立つかはさておき、分析美学者は少なからず多からず批評に取り組む。 美的価値やストリート・アートの研究で知られるニック・リグルはその一人だ。 今回はリグルがアンリ・マティスについて書いた一節を訳出した。 国立新美術館にて…
Collingwood, R. G. 1938. The Principles of Art. Oxford University Press. The Principles of Art 作者:Collingwood, R. G. Read Books Amazon R・G・コリングウッド『芸術の原理』には言語と他者理解に関する深い洞察がある。 ここで印象的な一節を抜き…
美学と社会認識論の研究で知られるティ・グエンは、ロサンゼルス・タイムズでフードライターをやっていた経歴をもつ。 そんなグエンが食文化について書いたエッセイがおもしろかったので、日本語に訳してみた。 このエッセイでは、グエンはジョン・ロールズ…
分析哲学批判の一つのパターン 分析哲学批判には一つのパターンがある。 いくつか例を挙げてこれを示そう。 山口尚による分析哲学批判は、一言で言えば分析哲学のスポーツ性を問題にしている。 この「スポーツ性」なる性質は「「手を変え、品を変え」という…
今年二月発売の写真の教科書『現代写真――行為・イメージ・態度――』(勝又公仁彦編)に寄稿しました。 写真2 現代写真: 行為・イメージ・態度 (はじめて学ぶ芸術の教科書) 発売日: 2021/02/15 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) この本は二巻本のうち…
Nguyen, C. T. (2020). Echo Chambers and Epistemic Bubbles Episteme, 17(2), 141-161. 近年、ポストトゥルースの時代が到来したとか、社会の分断が進んでいるとか、SNSが分断を促進しているといったことがよく言われる。 そこで見かけるのが「エコーチェ…
TYM344《東方の三博士》2015年 pic.twitter.com/rxLOAjTHlw — TYM344 (@TYM344) 2015年7月19日 現代アーティストTYM344には上掲の『東方の三博士』という絵画作品がある。 今日はこの作品を分析してみたいと思う。 これは描写の哲学のケーススタディの試みで…
ART RESEARCH ONLINEにて、サイモン・ブラックバーンが監修し、熊野純彦が日本語版を監修した『図鑑 世界の哲学者』の書評を書きました。 図鑑 世界の哲学者 発売日: 2020/08/06 メディア: 大型本 以下のリンクよりご覧いただけます。 哲学者の図鑑というの…