アメリカ哲学フォーラムで「芸術作品が鑑賞者の心を表現するとき:分析美学とコリングウッド」という発表を行いました。 たとえば、私たちは特定のポピュラーソングを指して、自分の感情を(自分ではうまくできなかった仕方で)うまく表現していると言うこと…
美学会で「趣味のニーチェ的基準について」という発表を行いました。 趣味(センス)の良し悪しが問われる際の基準にはどんなものがあるんだろう、という問いを探究しています。 こちらで発表資料を公開しておきます。 タイトルにもあるように、今回の発表で…
哲学若手研究者フォーラムにてワークショップ「美学と自己」を開き、そこで「自己を表現し、理解し、再解釈すること:アンリ・マティスの場合」を発表しました。 今回の発表は、ケーススタディだけで構成された内容であり、自分の研究としては初の試みです。…
応用哲学会誌(Contemporary and Applied Philosophy)に論文「意図を明確化するとはどういうことか:作者の意図の現象学」が掲載されました。 芸術制作を行為論の枠組みに位置づけ、現象学的アプローチから、芸術制作にともなうコントロールと自己知(意図…
美術作家である菊池遼さんが以下のようなツイートをしていた。 近代美学、絵画や彫刻や舞踏や詩が模倣を本質とするというのはまあとりあえずは分かるのだが、音楽における模倣ってどういうことなんだろう。なんかピンとこないな。 — KIKUCHI Ryo 菊池 遼 (@h…
Self-Knowledge for Humans 作者:Cassam, Quassim Oxford University Press, USA Amazon 前回、カサームは自己知の哲学を案内するにあたって、自己知に対する一般的な関心と哲学者の関心にはギャップがあると指摘し、この点を説明するために、自己知を二種類…
自己知(self-knowledge)の哲学という分野がある。 自己知とは、典型的には、自分の心的状態(信念や欲求など)についての知識のことだ。 今回は、自己知の哲学に従事しているカシーム・カサーム(Quassim Casssam)が執筆した「自己知へのビギナーズガイド…
『新進研究者 Research Notes』(第5号)に「表出性と創造性:表出説を改良する」が掲載されました。 この論文について、要旨、問題意識、あとがきを記してみます。 要旨と問題意識 本文中の要旨が英語表記のため、日本語版をこちらに掲載します。 分析美学…
ワークショップ「作者の意図、再訪」が無事閉幕しました。 上記リンク先の記事の一番下に、僕の発表「創造的行為における意図とその明確化」の発表資料を置いているので、気になる方は確認してみてください。 ようやく多少余裕ができたので、先日応用哲学会…
哲学オンラインセミナーにてワークショップ「作者の意図、再訪」を開催します。 開催概要は上記リンクから確認できますが、一応ここにも掲載しておきます。 ワークショップ「作者の意図、再訪」 日時:6月4日(土)14:00–17:00 概要: 作者の意図は芸術解釈…
逆遠近法とは何でしょうか。 わかりやすい記述と例を示したのち、逆遠近法がわかりにくい理由を考えてみます。 逆遠近法のわかりやすい記述 コトバンクに載っている以下の記述が一番わかりやすいと思います。 ぎゃく‐えんきんほう ‥ヱンキンハフ【逆遠近法】…
アボガド6の連作 アート作品とは受肉化された意味である。 アーサー・ダントー アボガド6には人間の精神状態を扱った一連の作品(以下、連作)が存在する。 ここでは具体例として四つの作品を挙げよう。 心配事 pic.twitter.com/gyQbbQ1I1C — アボガド6 (@av…
芸術作品を作りそこねることについて二人の美学者が議論している。 二つの記事で第一に問題となっているのは、「failed-art」なるクラスが実際に存在することを認めるかどうかである。 「failed-art」とはクリスティ・マグワイアが提唱した概念で、銭清弘さ…
松永伸司『ビデオゲームの美学』の帯には「ビデオゲームは芸術だ!」というキャッチフレーズが用いられている(松永さんではなく編集者の言葉らしい)。 今回訳出して紹介するのは、これとは対照的に、「芸術はゲームだ」と題されたティ・グエンの記事である…
児玉聡さんの「オックスフォード哲学者奇行」を読むのはじつに楽しい。 これは、オックスフォード大学にゆかりのある哲学者にまつわるエピソードを紹介する連載記事で、分析系の哲学者のあいだでも話題になることがある。 連載で最初に取り上げられる人物は…
『ニューQ』(Issue03 名付けようのない戦い号)に「写真を介した情動」という記事を寄稿しました。 ニューQ: 新しい問いを考える哲学カルチャーマガジン (Issue03 名付けようのない戦い号) セオ商事 Amazon 「写真で何かをつたえるとは何か?」という企画を…
最近、芸術実践における作者の意図の役割がまたもや話題になっている。 そのきっかけはさておき、私は人々の意図理解が気になっている。 とりわけ、自分の意図に関する作者の報告の受け止め方に関して。 みんな作者の意図の役割についてよく議論するのに、そ…
分析美学が批評の執筆に役立つかはさておき、分析美学者は少なからず多からず批評に取り組む。 美的価値やストリート・アートの研究で知られるニック・リグルはその一人だ。 今回はリグルがアンリ・マティスについて書いた一節を訳出した。 国立新美術館にて…
Collingwood, R. G. 1938. The Principles of Art. Oxford University Press. The Principles of Art 作者:Collingwood, R. G. Read Books Amazon R・G・コリングウッド『芸術の原理』には言語と他者理解に関する深い洞察がある。 ここで印象的な一節を抜き…
美学と社会認識論の研究で知られるティ・グエンは、ロサンゼルス・タイムズでフードライターをやっていた経歴をもつ。 そんなグエンが食文化について書いたエッセイがおもしろかったので、日本語に訳してみた。 このエッセイでは、グエンはジョン・ロールズ…
分析哲学批判の一つのパターン 分析哲学批判には一つのパターンがある。 いくつか例を挙げてこれを示そう。 山口尚による分析哲学批判は、一言で言えば分析哲学のスポーツ性を問題にしている。 この「スポーツ性」なる性質は「「手を変え、品を変え」という…
今年二月発売の写真の教科書『現代写真――行為・イメージ・態度――』(勝又公仁彦編)に寄稿しました。 写真2 現代写真: 行為・イメージ・態度 (はじめて学ぶ芸術の教科書) 発売日: 2021/02/15 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) この本は二巻本のうち…
Nguyen, C. T. (2020). Echo Chambers and Epistemic Bubbles Episteme, 17(2), 141-161. 近年、ポストトゥルースの時代が到来したとか、社会の分断が進んでいるとか、SNSが分断を促進しているといったことがよく言われる。 そこで見かけるのが「エコーチェ…
TYM344《東方の三博士》2015年 pic.twitter.com/rxLOAjTHlw — TYM344 (@TYM344) 2015年7月19日 現代アーティストTYM344には上掲の『東方の三博士』という絵画作品がある。 今日はこの作品を分析してみたいと思う。 これは描写の哲学のケーススタディの試みで…
ART RESEARCH ONLINEにて、サイモン・ブラックバーンが監修し、熊野純彦が日本語版を監修した『図鑑 世界の哲学者』の書評を書きました。 図鑑 世界の哲学者 発売日: 2020/08/06 メディア: 大型本 以下のリンクよりご覧いただけます。 哲学者の図鑑というの…
つい先日、TwitterではNHK出版の「100分de名著」シリーズ、岸政彦『ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年12月』(以下、著者の名前を取って「岸本」と呼ぶ)が話題になっていた。 NHK 100分 de 名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020…
先日哲学若手研究者フォーラムで行った発表「芸術作品を情動そのものとして理解する方法」のスライド資料になります(発表の時点では別ファイルにしていた文献リストを追加してあります)。 スライドだけ見ても議論を十分に把握するのは難しいでしょうが、断…
先日ART RESEARCH ONLINEで行った「画像ならではの感情表現:リチャード・モスの挑戦」と題する発表のスライドになります。 発表自体はアーカイブがあり、以下のリンクより視聴できます。 画像ならではの感情表現という美学上の理論的な問題とリチャード・モ…
『フィルカル』最新号、描写の哲学特集に寄稿した表題の論文のあとがきです。 描写の哲学における分離をめぐる議論を手がかりに、「視覚的修辞」と名づけた技法の存在、構造、意義を浮かび上がらせる内容となっています。 以前「描写の哲学研究会」で行った…
Collingwood, R. G. 1938. The Principles of Art. Oxford University Press. 哲学若手の発表で使う予定が、時間に余裕がなく、結局使わなかった一節。 せっかくなので訳出したものをここに載せておきます。 コリングウッドの情動表出の理論の要点が詰まった…