今年二月発売の写真の教科書『現代写真――行為・イメージ・態度――』(勝又公仁彦編)に寄稿しました。
この本は二巻本のうちの下巻に当たるもので、上巻はこちら。
僕は「写真のニュー・セオリー――写真の本性に関する急進的理解」というタイトルの記事を寄稿しています。
写真のニュー・セオリーに関してはこのブログでもエイベルの論考を紹介するかたちでロペスのバージョンを二回に分けて紹介したことがあります。
じつは、寄稿記事はブログ記事を大幅に改稿したものとなっています。
ブログ記事との大きな違いは二点。
- わかりにくい部分をより丁寧に書いたよ。
- 過激さと同じくらい穏当さも強調したよ。
四つの写真芸術の具体的なあり方や社会的規範に訴える説明の帰結、ロペスが採用する哲学方法論など、ブログ記事では十分に書けなかったことを、寄稿記事ではより丁寧に書いています。
ただし、(方針の違いもあり)寄稿記事では言及していない論点をブログ記事の方では取り上げていることがあるため、トレードオフの関係になっています。
そして、まさにその方針の違いというのが、寄稿記事では過激さと同じくらい穏当さを強調したということです。
実際、両記事が具体的に紹介しているロペス版は過激ですが、ニュー・セオリー一般はそうでもありません。
ブログ記事はその点、ややミスリーディングだったのではないかと反省しています。
また、ロペス版にしても、その過激さはある一点について言えるのみであり、基本的に柔軟な説明力をもった理論だと考えています。
寄稿記事はそのあたりを意識して執筆しました。
ちなみに、発売こそ今年二月ですが、執筆したのは二年前で、じつはこれが依頼されて書いた最初の文章だったりします。
文体として敬体が指定されていたのですが、当時(と言わず現在も)敬体で論考を書くことに慣れておらず、ブログ記事の方がのびのび書けている感じがしたり。
製品版を確認したら常体で寄稿している方を見つけて脱力もしたり。
何はともあれ、多様なアプローチで写真や関連文化を論じる記事がたくさん入っていて参考になる本なので、写真に関心のある方はぜひ手に取ってみてください。