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スフレを穴だけ残して食べる方法

ワークショップ「作者の意図、再訪」開催概要(+おまけ)

哲学オンラインセミナーにてワークショップ「作者の意図、再訪」を開催します。

開催概要は上記リンクから確認できますが、一応ここにも掲載しておきます。

ワークショップ「作者の意図、再訪」

 

日時:6月4日(土)14:00–17:00

 

概要

作者の意図は芸術解釈に関与的か。「意図の誤謬」(ウィムザット&ビアズリー)以来、この問いをめぐって分析美学ではおびただしい量のインクが費やされてきた。とはいえ、美学が扱うトピックが飛躍的に増えるなかで、その盛り上がりは往年のそれと比べて落ち着いてきているのもたしかである。本ワークショップの狙いは、新しい視点とツールを携えてこの古典的問いを再訪し、それを改めて活気づけることである。

 

原虎太郎「J. レヴィンソンの仮説的意図主義を評価する」

分析美学では、作者の意図は芸術作品の正しい解釈の決定に関与的なのかという問題をめぐって、活発な論争が交わされてきた。最も有力視される理論の一つである仮説的意図主義は、この問題に対して、大まかにいって〈作者の意図に関する最良の仮説が作品の意味を決定する〉と答える立場である。本報告では、仮説的意図主義の主要な支持者であるJ. レヴィンソンの主張を検討する。その際特に、レヴィンソンが「実際の作者の仮説的意図主義」と呼ばれるバージョンを支持していることに注目し、これが自身のモチベーションを十分に反映していないのではないかと論じる。

 

銭清弘「制度は意図に取って代われるのか」

作者の意図が作品の意味や内容を決定するという見解は、分析美学において根強く支持されてきた。本発表では、キャサリン・エイベル『フィクション:哲学的分析』によって提示された代替案を検討する。エイベルによれば、フィクションとは作者と鑑賞者で想像を共有するゲームであり、その根幹をなす「想像の伝達」という課題を解決するのは、作者の内的な意図ではなく、作者と鑑賞者の共有するフィクションの制度、そこに含まれる内容決定ルールである。エイベルの制度的アプローチには妥当でない前提および帰結が伴うことを指摘し、鑑賞者同士の協調に依拠した別の制度的アプローチを提案する。

 

村山正碩「創造的行為における意図とその明確化」

意図論争において、そもそも意図とは何かという問いが主題化されることは少ないが、芸術制作(ひいては創造的行為一般)における行為者の意図のあり方はそれ自体興味深く、さまざまな分野の関心の対象となってきた。しばしば指摘されるのは、芸術制作では、芸術家は事前に明確な意図をもたず、制作の過程で自身の意図を明確化していくこと、そして、作品の完成時(ロバート・ピピンの表現では)「意図が一種の焦点を結ぶ」ことである。本発表では、芸術哲学と行為論の接続を通して、この種の現象を関連する諸現象から区別し、輪郭づけ、比喩に頼らない仕方で具体的に記述することを目指す。

 

司会:村山正碩

 

主催:哲学オンラインセミナー

 

Zoomミーティングルーム:Slackの#generalチャンネルをご覧ください。開催が近づきましたらチャンネル内でURLが公開されます。

分析美学の前提知識はなくても大丈夫なので、ぜひお気軽にご参加ください。

ちなみに、アイキャッチは『分析美学基本論文集』の表紙のカラーリングを参考にして作成しました(古典の趣きを出したくて)。

原さんの発表ではレヴィンソンの理論が検討されますが、本論文集にはレヴィンソンの論文「文学における意図と解釈」が収録されているので、予習してみたいという方にはいいかもしれません。

銭さんの発表にて検討されるキャサリン・エイベル『フィクション:哲学的分析』は、フィクションの哲学の最前線に位置づけられるもので、制度論(グァラ等)の枠組みに依拠した議論を展開している点が特徴です。

銭さんは本書についてレビューも書いています。

ワークショップの打ち合わせでは、本書の装画(ジョン・カリンの絵画)をいかに解釈すべきかについて議論する一幕もありました。

私の発表では、要旨には示していませんが、主要参考文献としてアーロン・リドリーの以下の著作を取り上げるつもりです。

その筋の方であれば装画を見て察知するかもしれませんが、本書はニーチェ研究の本になります(いわゆる分析系ニーチェ研究の本です)。

ただし、本発表は本書の第一章、もっとも長い章でありながら、いまだニーチェの登場しない章に注目するため、じつはそれほどニーチェには関係ありません。

本書の議論の検討のほか、分析系の行為論や芸術哲学の議論を幅広く参照する予定です(スチュアート・ハンプシャーやベリス・ガウトなど)。

なお、本発表における私の問題意識の一部は以下の記事で示されています。

ちなみに、近刊「表出性と創造性:表出説を改良する」も、本発表とは問題意識を暗に共有していたりするので、こちらもぜひ。

 

〈追記:20220607〉

無事ワークショップを終えたので、ここに僕の発表資料を掲載しておきます。