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スフレを穴だけ残して食べる方法

サルでもわかる逆遠近法

逆遠近法とは何でしょうか。

わかりやすい記述と例を示したのち、逆遠近法がわかりにくい理由を考えてみます。

逆遠近法のわかりやすい記述

コトバンクに載っている以下の記述が一番わかりやすいと思います。

ぎゃく‐えんきんほう ‥ヱンキンハフ【逆遠近法】
〘名〙 遠近関係を表現するのに、前方にある物を後方のものより小さく描く絵画技法。近世の絵巻物や浮世絵などにみられる。
出典 精選版 日本国語大辞典

「前方にある物を後方のものより小さく描く」がポイントです。

ついでに言えば、逆遠近法とは〈遠近法の逆〉なので、この記述を逆にすれば遠近法の記述になります。

両者を並べてみましょう。

  • 遠近法 :前方にある物を後方のものより大きく描く絵画技法。
  • 逆遠近法:前方にある物を後方のものより小さく描く絵画技法。
逆遠近法のわかりやすい例

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数年前よく見かけた「行くぜ、東北。」のポスターです。

電車の前方が小さく、後方が大きく描かれています。

これは上の記述に合致しており、逆遠近法の例です。

念のため、遠近法の例も見てみましょう。

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いらすとやの線路のイラストです。

線路の前方が大きく、後方が小さく描かれています。

遠近法/逆遠近法は幾何学の観点からより厳密に理解することも可能ですが、初歩的な理解としてはこれくらいで十分なはずです。

逆遠近法がわかりにくい理由

逆遠近法は絵画技法なので、逆遠近法を知ろうとする人は画像検索するでしょう。

しかし、「逆遠近法」で画像検索してみると、いくつか困ったことが起きます。

第一に、遠近法の例と逆遠近法の例の両方が出てきてしまいます。

第二に、逆遠近法の例であったとしても、たいていは(洋の東西を問わず)近代以前の絵画作品なのですが、複雑だったり、微妙だったりして、わかりにくいです。

第三に、これこそこの記事を書いた動機なのですが、じつは約半数の画像がここでいう「逆遠近法」とはそもそも無関係だったりします。

どうやら、まったく異なる二つの現象が「逆遠近法」と呼ばれているようなのです。

この記事で解説しなかった方の逆遠近法の例はこれです。

パトリック・ヒューズの作品は浮き彫りですが、浮き彫りの物理的な凹凸と浮き彫りに描かれた空間の凹凸を反転させることで、不思議な視覚的効果を生み出しています。

ともあれ、この作品が「前方にある物を後方のものより小さく描く絵画技法」を用いたものではないことは明らかでしょう。

すでに解説した方の逆遠近法と比べ、こちらは後発の表現技法であり、コトバンクにも記載がありません。

「逆遠近法」の二つの用法をまとめておきましょう。

  1. 前方にある物を後方のものより小さく描く絵画技法。
  2. 浮き彫りの物理的な凹凸と描かれた空間の凹凸を反転させる表現技法。

「逆遠近法」には二つの異なる用法が存在しますが、これに注意を促す記事は見当たりませんでした(検索結果の上位に表示されなかったということです)。

「逆遠近法」について知ろうとする者が混乱するのも無理はないでしょう。